病院の良し悪し

2025年10月
  • 閉塞性動脈硬化症は足だけじゃない?全身の動脈硬化

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    閉塞性動脈硬化症は、主に足の血管に動脈硬化が起こり、血流が悪くなる病気ですが、この病気と診断されたということは、足だけでなく、全身の他の部位の血管にも動脈硬化が進行している可能性が高いということを意味します。動脈硬化は、特定の部位だけに起こるものではなく、全身の血管に影響を及ぼす全身性の病気だからです。閉塞性動脈硬化症の患者さんは、心臓の血管(冠動脈)や、脳の血管(頸動脈や脳動脈)にも同様に動脈硬化が進んでいるリスクが高いことが知られています。実際に、閉塞性動脈硬化症の患者さんの約半数から三分の二程度が、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患を合併している、あるいは将来的に発症するリスクが高いと言われています。また、脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)といった脳血管障害を発症するリスクも、そうでない人に比べて高くなります。これらの心血管イベントや脳血管イベントは、生命に関わる重大な合併症であり、閉塞性動脈硬化症の患者さんの予後を左右する大きな要因となります。そのため、閉塞性動脈硬化症の治療においては、足の症状を改善するだけでなく、全身の動脈硬化の進行を抑え、これらの合併症を予防するという視点が非常に重要になります。具体的には、禁煙、食事療法、運動療法といった生活習慣の改善を徹底するとともに、高血圧、脂質異常症、糖尿病といった危険因子を厳格にコントロールすることが求められます。また、血液をサラサラにする抗血小板薬や、コレステロールを下げるスタチン系の薬剤などは、足の血流改善だけでなく、全身の血管イベントの予防にも効果が期待できます。閉塞性動脈硬化症と診断されたら、それは「足だけの病気」と捉えるのではなく、「全身の血管の病気」という認識を持ち、定期的な検査(心臓や脳血管の評価など)を受けながら、包括的な管理を行っていくことが大切です。循環器内科や血管外科の医師だけでなく、必要に応じて他の専門医とも連携を取りながら、総合的な治療を進めていくことが、健康寿命を延ばすために不可欠です。