大人が手足口病にかかった場合、その感染力の強さから、家族や周囲の人への感染拡大を防ぐための対策が非常に重要となります。特に、家庭内に乳幼児や高齢者、免疫力の低下している方がいる場合は、細心の注意が必要です。まず、最も基本的な予防策は、こまめな手洗いとうがいです。手足口病のウイルスは、咳やくしゃみによる飛沫だけでなく、便や水疱の内容物にも含まれています。トイレの後、おむつ交換の後、食事の前、帰宅時など、石鹸と流水で丁寧に手を洗いましょう。アルコール消毒も有効ですが、エンテロウイルスに対しては効果が限定的であるため、石鹸による手洗いを優先することが推奨されます。次に、タオルの共用を避けることです。洗面所や浴室で使用するタオルは、個人ごとに分け、こまめに洗濯するようにしましょう。食器やカトラリーの共用も、念のため避けた方が賢明です。咳エチケットも重要です。咳やくしゃみをする際は、ティッシュやハンカチ、あるいは袖などで口や鼻を覆い、周囲への飛沫の拡散を防ぎましょう。使用したティッシュはすぐにゴミ箱に捨てます。また、患者さんの便の処理には特に注意が必要です。おむつを交換した際や、トイレ掃除の際には、使い捨ての手袋を着用し、処理後は必ず石鹸で手を洗いましょう。ウイルスは便中に長期間(数週間から数ヶ月)排出されることがあるため、症状が治まった後も、しばらくは注意が必要です。患者さんが触れたドアノブ、手すり、おもちゃなどは、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤を薄めたもの)やアルコールなどでこまめに消毒するのも効果的です。そして、患者さん自身は、症状が治まるまで、できるだけ人混みを避け、不要不急の外出を控えるようにしましょう。これらの感染予防策を徹底することで、家族や周囲への感染リスクを最小限に抑えることができます。