水疱瘡（水痘）は、多くの子どもが経験する感染症ですが、その症状は軽く済むとは限りません。強いかゆみを伴う水疱が全身に出現し、時には重篤な合併症を引き起こすこともあります。このような水疱瘡から子どもたちを守るために、最も有効な予防法がワクチン接種です。水疱瘡ワクチンは、弱毒化された水痘・帯状疱疹ウイルスを接種することで、体内に免疫を獲得させるものです。日本では、2014年10月から定期接種の対象となり、1歳から3歳未満の子どもは、原則として2回の接種を公費（無料）で受けることができます。1回目の接種は1歳になったらできるだけ早く、2回目の接種は1回目の接種から3ヶ月以上（標準的には6ヶ月から1年）の間隔をあけて行います。ワクチンを2回接種することで、水疱瘡の発症を約90%以上予防できるとされています。また、たとえワクチンを接種した後に水疱瘡にかかってしまったとしても（ブレイクスルー水痘と呼ばれます）、症状が軽く済む場合が多く、水疱の数も少なく、発熱も軽度で済む傾向があります。合併症のリスクも大幅に軽減されることが期待できます。さらに、ワクチン接種は、個人を守るだけでなく、集団免疫を高めるという重要な役割も担っています。多くの人がワクチンを接種することで、社会全体でのウイルスの流行を抑え、ワクチンを接種できない人（免疫不全の患者さんや、医学的な理由で接種できない人など）を間接的に守ることにもつながります。水疱瘡ワクチンは、一般的に安全性の高いワクチンですが、他のワクチンと同様に、接種後に発熱や接種部位の腫れといった副反応が現れることがあります。しかし、これらは一時的なものがほとんどです。ワクチン接種のメリットとデメリットを正しく理解し、かかりつけ医とよく相談した上で、適切な時期に接種を受けることが、子どもたちを水疱瘡の苦痛から守るための最善の方法と言えるでしょう。