かかとの後ろの痛みや腫れがなかなか治らない場合、もしかしたら「ハグルンド病(Haglund’s deformity)」、または「ハグルンド変形」と呼ばれる状態が関係しているかもしれません。ハグルンド病とは、かかとの骨(踵骨)の後ろ側の上部が、異常に突出したり、角張ったりする骨の変形を指します。この突出した骨が、アキレス腱やその周囲にある滑液包(アキレス腱後滑液包)を圧迫したり、摩擦したりすることで、炎症や痛みを引き起こします。症状としては、かかとの後ろ側の腫れ、赤み、熱感、そして運動時や靴を履いた時の痛みが特徴的です。特に、靴のかかと部分が突出した骨に当たることで、痛みが悪化しやすくなります。見た目にも、かかとの後ろがポコッと膨らんでいるのが分かることもあります。ハグルンド病の原因は、完全には解明されていませんが、いくつかの要因が考えられています。生まれつきの骨の形状が影響している場合や、長年にわたる繰り返しの負荷(ランニングやジャンプなど)、不適切な靴の使用(かかと部分が硬い靴や、ヒールの高い靴など)などが、骨の変形を助長したり、症状を顕在化させたりする要因となると言われています。また、扁平足やハイアーチといった足の構造的な問題も、かかとへの負担を増やし、ハグルンド病の発症に関与する可能性があります。治療は、まず保存療法が基本となります。原因となる靴の使用を避け、クッション性があり、かかと部分が柔らかい靴を選びます。ヒールリフト(かかとを少し高くする中敷き)を使用することで、アキレス腱の緊張を和らげ、骨との摩擦を軽減する効果も期待できます。アイシングや消炎鎮痛剤(内服薬、湿布、塗り薬など)で炎症と痛みをコントロールし、アキレス腱やふくらはぎのストレッチも行います。保存療法で改善が見られない場合や、症状が重い場合には、突出した骨を削る手術が検討されることもあります。