水疱瘡(水痘)の最も特徴的な症状は、何と言っても全身に出現する赤い発疹と、それが変化していく水疱(水ぶくれ)です。この発疹と水疱の経過を理解しておくことは、水疱瘡の診断や、適切なケアを行う上で非常に重要となります。まず、発疹は、体幹部(胸、お腹、背中など)から出始めることが多く、その後、顔、頭皮、手足の末端へと広がっていきます。口の中や陰部といった粘膜にもできることがあります。最初は、虫刺されのような、あるいはあせものような赤いポツポツとした小さな斑点(紅斑)として現れます。この時点では、まだかゆみはそれほど強くないこともあります。しかし、この紅斑は急速に変化し、数時間から1日程度で、その中心部分がプクッと盛り上がり、透明な液体を含んだ小さな水疱へと変わります。この水疱は、直径数ミリ程度のものが多く、まるで「露のしずく」が乗っているように見えることもあります。この水疱の段階になると、強いかゆみを伴うのが一般的です。子どもは特にかゆみを我慢できずに掻きむしってしまいがちですが、掻き壊すと細菌感染を起こしたり、痕が残りやすくなったりするため注意が必要です。水疱は、1~2日程度で中の液体が濁ってきたり、少しへこんだりするようになり、やがて**破れてびらん(ただれ)**となります。そして、その後、黒っぽいかさぶた(痂皮)となって乾燥し、1週間から2週間程度で自然に剥がれ落ちます。水疱瘡の発疹の大きな特徴は、この紅斑、水疱、膿疱(濁った水疱)、痂皮といった、異なる段階の発疹が、同じ時期に混在して見られることです。これを「発疹の多形性」と呼び、水疱瘡の診断の重要な手がかりとなります。発疹は、通常3~5日間にわたって次々と新しいものが出現し、全ての水疱がかさぶたになるまでには、1週間程度の期間を要します。