手足口病は、多くの場合、数日から1週間程度で自然に治癒する比較的軽症の感染症ですが、まれに合併症を引き起こすことがあり、特に大人がかかった場合は注意が必要です。子どもよりも症状が重くなる傾向がある大人の手足口病では、どのような合併症に気をつけるべきなのでしょうか。最も注意すべき重篤な合併症の一つが、中枢神経系の合併症です。具体的には、無菌性髄膜炎や、さらに稀ではありますが脳炎(脳症)などが挙げられます。これらの合併症は、特にエンテロウイルス71(EV71)が原因となった場合に起こりやすいとされています。症状としては、持続する高熱、激しい頭痛、繰り返す嘔吐、意識障害(朦朧とする、呼びかけへの反応が鈍いなど)、けいれん、項部硬直(首の後ろが硬くなり、前に曲げにくくなる)などが見られます。これらの症状が現れた場合は、生命に関わる危険性もあるため、速やかに医療機関を受診し、適切な検査と治療を受ける必要があります。また、稀な合併症として、心筋炎や急性弛緩性麻痺なども報告されています。心筋炎は、心臓の筋肉に炎症が起こる病気で、胸痛や動悸、呼吸困難といった症状が現れることがあります。急性弛緩性麻痺は、手足の筋力が急に低下し、麻痺が起こる病気です。これらの合併症は、いずれも早期発見・早期治療が重要となります。その他、手足口病の回復後に、**爪の変形や脱落(爪甲脱落症)**が見られることがあります。これは、ウイルス感染の影響で一時的に爪の成長が阻害されるために起こると考えられており、通常は数ヶ月で新しい爪が生え変わります。これらの合併症は、いずれも頻度が高いものではありませんが、万が一の可能性として知っておくことが大切です。手足口病の経過中に、普段と違う強い症状が現れたり、全身状態が悪化したりした場合は、自己判断せずに速やかに医療機関を受診するようにしましょう。