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顔面神経麻痺診断までの流れと検査
顔面神経麻痺が疑われる場合、医療機関ではどのような流れで診断が行われ、どのような検査が必要になるのでしょうか。そのプロセスを理解しておくと、安心して受診できるでしょう。まず、医療機関(主に耳鼻咽喉科や神経内科など)を受診すると、医師による詳しい問診が行われます。いつから、どのように顔の動きが悪くなったのか、顔のどの部分(額、目、口など)に麻痺があるのか、麻痺の程度、他に症状(耳の痛み、水疱、めまい、難聴、味覚障害、涙や唾液の量の変化、手足のしびれや麻痺など)はあるか、最近風邪をひいたり、疲労やストレスが溜まっていたりしなかったか、既往歴、服用中の薬などを詳しく聞かれます。次に、身体診察が行われます。医師は、顔面の動き(額にしわを寄せる、目を強く閉じる、口を膨らませる、イーッと歯を見せるなど)を指示し、麻痺の部位や程度を客観的に評価します(柳原法などの評価スケールが用いられることもあります)。また、耳の中や周囲に水疱がないか、聴力に異常はないか、味覚に変化はないかなどを調べます。顔面神経麻痺の原因や重症度を評価するために、いくつかの検査が行われることがあります。代表的な検査としては、「顔面神経機能検査(ENoG:Electroneurography)」があります。これは、顔面神経を電気で刺激し、筋肉の反応を記録することで、神経のダメージの程度を客観的に評価する検査です。麻痺の予後を予測する上でも重要な検査とされています。「聴力検査」や「平衡機能検査」は、ハント症候群などで内耳の機能障害が疑われる場合に行われます。「味覚検査」や「涙液分泌検査(シルマーテスト)」も、顔面神経の障害部位を特定する手がかりとなります。血液検査は、帯状疱疹ウイルスなどの感染症の有無や、炎症の程度などを調べるために行われます。また、脳梗塞や脳腫瘍といった中枢性の原因が疑われる場合や、原因がはっきりしない場合には、頭部MRI検査やCT検査といった画像検査が行われることもあります。これらの検査結果と、問診や診察所見を総合的に判断し、医師は顔面神経麻痺の診断を下し、原因を特定して、適切な治療方針を決定します。