睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療法として最も広く知られているのは、CPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法)療法ですが、SASの治療法はそれだけではありません。原因や重症度、患者さんの状態に合わせて、様々な治療法が選択され、複数の診療科が関わることがあります。まず、CPAP療法は、中等症から重症の閉塞性SASに対する標準的な治療法です。寝る時に鼻マスクや顔マスクを装着し、機械から持続的に空気を送り込むことで、睡眠中の気道の閉塞を防ぎ、無呼吸を改善します。この治療は、主に呼吸器内科や睡眠外来で導入・管理が行われます。次に、マウスピース(口腔内装置)による治療があります。これは、下顎を前方に少し突き出させるような特殊なマウスピースを就寝時に装着することで、気道を広げ、いびきや無呼吸を軽減する治療法です。軽症から中等症の閉塞性SASや、CPAP療法が合わない場合に選択されることがあります。マウスピースの作製は、主に歯科や口腔外科で行われますが、SASの診断は呼吸器内科などで行われるため、連携が必要です。耳鼻咽喉科では、鼻づまりや扁桃腺肥大、アデノイドといった鼻や喉の構造的な問題がSASの原因となっている場合に、外科的治療が検討されることがあります。例えば、鼻中隔弯曲症に対する鼻中隔矯正術、扁桃腺肥大に対する口蓋扁桃摘出術、あるいは気道を広げるための口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)などが行われます。これらの手術によって、気道の閉塞が改善されれば、SASの症状も軽減される可能性があります。また、生活習慣の改善も非常に重要な治療法の一つです。肥満はSASの大きなリスク因子であるため、減量(食事療法や運動療法)が推奨されます。禁煙や節酒、睡眠薬の使用を控えること、横向きで寝る(側臥位睡眠)といった工夫も、症状の改善に役立つことがあります。これらの生活習慣指導は、各診療科で行われます。このように、SASの治療は多岐にわたり、患者さんの状態に合わせて、様々な専門家が連携して治療を進めていくことが理想的です。
CPAP療法だけじゃないSASの治療法と診療科