重い物を持ち上げようとした瞬間、あるいは日常の何気ない動作で、突然、腰に激しい痛みが走り、動けなくなってしまう…。そんな「ぎっくり腰(急性腰痛症)」は、経験した人にしか分からない、非常につらい症状です。あまりの痛みに、「一体、何科を受診すれば良いのだろう?」と途方に暮れてしまう方も少なくないでしょう。ぎっくり腰の主な原因は、腰の筋肉や靭帯、椎間関節といった組織の急性の損傷や炎症であると考えられています。このような運動器系のトラブルを専門的に診療するのは、整形外科です。整形外科医は、骨、関節、筋肉、靭帯、神経といった運動器の専門家であり、ぎっくり腰の原因を特定し、適切な治療法を提案してくれます。問診や身体診察(痛む場所、動きの制限、神経症状の有無などを確認)に加え、必要に応じてレントゲン検査やMRI検査といった画像検査を行い、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、あるいは稀ですが骨折や腫瘍といった、より重篤な疾患が隠れていないかを鑑別します。治療としては、まず痛みを和らげるための薬物療法(消炎鎮痛剤の内服薬、湿布、塗り薬など)や、コルセットによる固定、そして安静の指示が基本となります。痛みが少し落ち着いてきたら、温熱療法や電気治療、マッサージといった理学療法や、ストレッチ、筋力トレーニングなどの運動療法も行われます。また、痛みが非常に強い場合には、ペインクリニックも有効な選択肢となります。ペインクリニックでは、神経ブロック注射などを用いて、ぎっくり腰の激しい痛みを効果的に緩和することができます。どちらの科を受診するにしても、大切なのは、痛みを我慢せずに早めに医療機関に相談することです。自己判断で無理に動いたり、不適切なマッサージを受けたりすると、かえって症状を悪化させてしまう可能性もあるため注意が必要です。