顔面神経麻痺は、適切な治療を早期に開始すれば、多くの場合、良好な回復が期待できます。しかし、中には麻痺が完全に治りきらずに、後遺症が残ってしまうケースも少なくありません。後遺症をできるだけ残さないためには、いくつかの重要なポイントがあります。まず、最も大切なのは、発症後できるだけ早く(理想的には72時間以内)専門医(耳鼻咽喉科や神経内科など)を受診し、適切な初期治療(主にステロイド薬や抗ウイルス薬の投与)を開始することです。治療開始が遅れるほど、神経のダメージが進行し、回復が悪くなる可能性が高まります。次に、医師の指示に従い、処方された薬をきちんと服用し、定期的に通院して経過を観察してもらうことです。自己判断で薬をやめたり、通院を中断したりしないようにしましょう。そして、急性期を過ぎたら、医師や理学療法士、作業療法士の指導のもとで、適切なリハビリテーションを行うことが重要です。顔面筋のマッサージやストレッチ、表情筋のトレーニングなどを、正しい方法で、根気強く続けることが、筋肉の回復を促し、拘縮や病的共同運動といった後遺症の予防に繋がります。ただし、麻痺が強い時期に無理な運動をしたり、自己流のマッサージを過度に行ったりすると、かえって病的共同運動を誘発する可能性があるため、必ず専門家の指導を受けるようにしてください。また、目が完全に閉じない場合は、角膜の乾燥や損傷を防ぐためのケア(人工涙液の点眼、眼軟膏の使用、就寝時の眼帯など)を徹底することも、目の後遺症を防ぐ上で重要です。精神的なケアも大切です。顔の麻痺は、見た目の変化から精神的なストレスを感じやすく、それが回復を妨げる要因となることもあります。不安なことや心配なことは、遠慮せずに医師や家族に相談し、精神的なサポートを得るようにしましょう。十分な睡眠とバランスの取れた食事、ストレスを溜めない生活を心がけることも、体の回復力を高める上で役立ちます。