手のひらが赤くなる症状は、更年期だけでなく、肝臓の機能が低下しているサインとして現れることもあります。これを「手掌紅斑(しゅしょうこうはん)」と呼び、特に肝硬変や慢性肝炎などの慢性的な肝臓病の患者さんに見られることがあります。更年期による手のひらの赤みと、肝臓病による手掌紅斑には、いくつかの違いが見られる場合があります。まず、赤みの現れ方です。肝臓病による手掌紅斑は、多くの場合、手のひらの母指球(親指の付け根のふくらみ)と小指球(小指の付け根のふくらみ)、そして指の腹側がまだらに赤くなるのが特徴です。手のひら全体が均一に赤くなるというよりは、特定の部位に赤みが目立ちやすい傾向があります。一方、更年期による手のひらの赤みは、全体的に赤っぽくなったり、ほてりを伴ったりすることが多いですが、赤みの分布には個人差があります。次に、他の随伴症状です。肝臓病が進行している場合、手掌紅斑以外にも、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、全身倦怠感、食欲不振、腹水(お腹に水がたまる)、むくみ、蜘蛛状血管腫(くもじょうけっかんしゅ:胸や肩などに赤いクモの巣のような血管模様が現れる)といった症状が見られることがあります。特に、黄疸は肝機能障害の重要なサインです。更年期の場合は、ホットフラッシュ、不眠、イライラ、肩こり、めまいといった更年期特有の症状が同時に現れることが多いでしょう。また、肝臓病による手掌紅斑は、エストロゲンの代謝異常が関与していると考えられています。肝機能が低下すると、体内でエストロゲンが分解されにくくなり、血中のエストロゲン濃度が相対的に高まることで、血管が拡張しやすくなり、手のひらが赤くなるとされています。これは、妊娠中に見られる手掌紅斑と同様のメカニズムです。手のひらの赤みに気づき、特に上記のような肝臓病を疑う他の症状がある場合や、お酒をよく飲む習慣がある方、肝炎ウイルスのキャリアである方などは、自己判断せずに、まずは内科や消化器内科を受診し、肝機能検査などを受けることが重要です。