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尿膜管遺残とは?へそから膿が出る原因の一つ
おへそから膿が出るという症状がある場合、特に成人で繰り返す場合や、お腹の痛みや発熱を伴う場合には、「尿膜管遺残(にょうまくかんいざん)」という病気の可能性も考えられます。尿膜管とは、胎児がお母さんのお腹の中にいる時に、おへそと膀胱を繋いでいた管のことです。胎児期には、この尿膜管を通じて尿を排出していますが、出生後は通常、自然に閉鎖して細い索状の組織(正中臍索:せいちゅうさいさく)になります。しかし、この尿膜管が完全に閉じずに、一部または全部が管状のまま残ってしまう状態を尿膜管遺残と呼びます。尿膜管遺残があっても、無症状で経過することも多いですが、残った管の中に尿や細菌が溜まり、感染や炎症を起こすと、様々な症状が現れます。代表的な症状としては、おへそからの排膿(膿や、時には尿のような液体が漏れ出る)、おへその赤みや腫れ、痛み、そしておへその奥(下腹部)の痛みやしこり、発熱などがあります。感染を繰り返すと、おへその周囲に膿瘍(膿のたまり)を形成したり、腹腔内に炎症が広がって腹膜炎を起こしたりすることもあります。また、非常に稀ではありますが、長期間放置された尿膜管遺残から、がん(尿膜管がん)が発生するリスクも指摘されています。尿膜管遺残の診断は、主に超音波検査やCT検査、MRI検査といった画像検査によって行われます。これらの検査で、おへそと膀胱の間に管状の構造物や、液体が溜まった嚢胞(のうほう)などが確認されれば、尿膜管遺残と診断されます。治療は、感染を起こしている場合は、まず抗菌薬による保存的治療が行われますが、根本的な治療としては、手術によって残っている尿膜管を摘出することが一般的です。手術は、腹腔鏡を用いた低侵襲な方法で行われることもあります。もし、おへそからの排膿が繰り返されたり、お腹の症状を伴ったりする場合は、尿膜管遺残の可能性も念頭に置き、泌尿器科や外科、形成外科などの専門医に相談することをお勧めします。