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糖尿病性神経障害と頻尿の関係性
糖尿病が進行すると、様々な合併症が引き起こされますが、その中でも比較的早期から現れやすいのが「糖尿病性神経障害」です。この神経障害が、膀胱の働きをコントロールしている自律神経にも影響を及ぼすと、頻尿をはじめとする様々な排尿トラブルの原因となることがあります。これを「糖尿病性膀胱症」と呼ぶこともあります。私たちの膀胱は、尿が溜まるとそれを感知し、適切なタイミングで尿意を感じさせ、そして膀胱の筋肉を収縮させて尿を排出するという複雑な働きをしています。これらの働きは、自律神経によって精密にコントロールされています。しかし、糖尿病によって高血糖状態が長く続くと、神経細胞にダメージが蓄積し、自律神経の機能が低下してしまいます。膀胱に関わる自律神経が障害されると、まず、膀胱に尿が溜まっていることを感知する能力が鈍くなることがあります。そのため、尿意を感じにくくなり、膀胱に大量の尿が溜まってしまう「尿閉(にょうへい)」に近い状態になることがあります。この状態では、膀胱が過度に引き伸ばされ、少しの尿でもすぐに尿意を感じてしまう「溢流性尿失禁(いつりゅうせいにょうしっきん)」や、残尿感、そして結果として頻尿に繋がることがあります。また、逆に膀胱が過敏になり、少量の尿でも強い尿意を感じてしまう「過活動膀胱」のような症状が現れることもあります。これにより、頻尿や尿意切迫感(急に我慢できないほどの尿意が起こる)が生じます。さらに、膀胱の収縮力が弱まり、尿を完全に排出しきれずに残尿が多くなると、その分すぐに次の尿意を感じやすくなり、頻尿の原因となります。また、残尿は尿路感染症(膀胱炎など)のリスクも高め、これも頻尿を悪化させる要因となります。このように、糖尿病性神経障害による膀胱機能の低下は、頻尿の複雑な原因となり得ます。糖尿病と診断されている方で、頻尿や排尿に関する悩みを抱えている場合は、主治医に相談し、泌尿器科的な評価を受けることも検討しましょう。