糖尿病の三大合併症の一つに「糖尿病性腎症」があります。これは、高血糖状態が長く続くことによって、腎臓の細い血管(糸球体)がダメージを受け、腎臓の機能が徐々に低下していく病気です。この糖尿病性腎症が進行すると、頻尿の症状が現れたり、逆に尿量が減ったりすることがあります。その関係性について理解しておきましょう。糖尿病性腎症の初期の段階では、自覚症状はほとんどありません。しかし、病気が進行し、腎臓のろ過機能が低下し始めると、体にとって必要なたんぱく質(アルブミンなど)が尿中に漏れ出てくるようになります(タンパク尿)。この時期には、まだ頻尿の症状は顕著ではないことが多いです。さらに腎機能が悪化し、腎不全の状態に近づいてくると、腎臓の尿を濃縮する能力が低下し、薄い尿がたくさん作られるようになることがあります。その結果、尿量が増加し(多尿)、夜間頻尿を含めた頻尿の症状が現れることがあります。つまり、糖尿病そのものによる高血糖性の多尿とは別に、腎機能の低下によっても多尿・頻尿が起こり得るのです。しかし、糖尿病性腎症が末期の腎不全に至ると、腎臓はほとんど尿を作れなくなり、逆に尿量が極端に減少する乏尿(ぼうにょう)や無尿(むにょう)の状態になります。この段階になると、体内に老廃物や余分な水分が蓄積し、むくみや高血圧、貧血、食欲不振、吐き気、全身倦怠感といった尿毒症の症状が現れ、透析療法や腎移植といった腎代替療法が必要となります。このように、糖尿病性腎症の進行度によって、頻尿の症状が現れたり、逆に尿量が減ったりと、排尿状態は変化します。糖尿病と診断されている方で、頻尿や尿量の変化、むくみといった症状に気づいたら、腎機能が悪化している可能性も考慮し、早めに主治医に相談することが重要です。定期的な尿検査や血液検査で腎機能の状態をチェックし、早期発見・早期治療に努めることが、腎症の進行を遅らせるために不可欠です。
糖尿病性腎症と頻尿の関係性について