ADHD(注意欠如・多動症)は、単独で存在するだけでなく、他の精神疾患や発達障害、身体疾患と併存(合併)しやすいことが知られています。そのため、ADHDの診療においては、これらの併存疾患の可能性も考慮し、必要に応じて他の診療科や専門家との連携が重要になります。ADHDと併存しやすい代表的な疾患としては、まず、反抗挑戦性障害や素行症といった行動面の障害が挙げられます。これらは、指示に従わない、反抗的な態度をとる、攻撃的な行動が見られるといった特徴があり、特に男の子に多いとされています。また、不安障害(全般性不安障害、社交不安障害、パニック障害など)やうつ病といった気分障害も、ADHDの特性による困難さやストレスから二次的に発症しやすいと言われています。学習障害(LD)や発達性協調運動症といった他の発達障害も、ADHDと併存することが少なくありません。学習障害があると、特定の学習領域(読み、書き、計算など)に困難が生じます。発達性協調運動症は、不器用さや運動の苦手さが特徴です。自閉スペクトラム症(ASD)も、ADHDと併存することがあり、コミュニケーションや対人関係の困難さ、特定のこだわりといった特性が見られます。その他、睡眠障害(不眠症や概日リズム睡眠障害など)や、チック症、トゥレット症候群なども、ADHDと併存することが報告されています。身体疾患としては、アレルギー疾患(気管支喘息やアトピー性皮膚炎など)や、てんかんとの関連も指摘されています。これらの併存疾患がある場合、ADHDの治療だけでなく、併存疾患に対する適切な治療や支援も必要となります。そのため、ADHDを診療する医師(精神科医、児童精神科医、小児科医など)は、必要に応じて、他の専門医(例えば、神経内科医、アレルギー専門医、皮膚科医など)や、臨床心理士、作業療法士、言語聴覚士、ソーシャルワーカー、学校の教師といった多職種と連携を取りながら、包括的なサポート体制を築いていくことが求められます。
ADHDと併存しやすい疾患と診療科の連携