顔の片側が急に動かなくなった「顔面神経麻痺」。いざ医療機関を受診しようと思った時、耳鼻咽喉科と神経内科、どちらが良いのか迷うことがあるかもしれません。それぞれの診療科の役割と特徴を理解し、適切な受診先を選ぶことが大切です。まず、耳鼻咽喉科は、顔面神経麻痺の診断と治療において、多くの場合、第一選択となる診療科です。顔面神経は、耳の奥深くにある側頭骨の中を通っているため、耳の病気との関連が深いのです。顔面神経麻痺の最も一般的な原因である「ベル麻痺(特発性顔面神経麻痺)」や、帯状疱疹ウイルスが原因で起こる「ハント症候群(ラムゼイ・ハント症候群)」は、主に耳鼻咽喉科で診断・治療が行われます。ハント症候群では、顔面神経麻痺に加えて、耳の痛みや水疱、めまい、難聴といった耳の症状を伴うことが特徴です。耳鼻咽喉科では、顔面の動きの評価に加え、聴力検査や平衡機能検査、顔面神経機能検査(ENoG:神経電図検査)などを行い、麻痺の原因や程度を詳しく調べます。治療としては、ステロイド薬や抗ウイルス薬の投与、ビタミン剤、血流改善薬などが用いられます。一方、神経内科は、脳、脊髄、末梢神経、筋肉といった神経系全体の病気を専門とする診療科です。顔面神経麻痺が、脳梗塞や脳出血、脳腫瘍といった脳の病気(中枢性顔面神経麻痺)の症状の一つとして現れている場合や、ギラン・バレー症候群、多発性硬化症といった全身性の神経疾患が原因である場合には、神経内科での専門的な診断と治療が必要となります。特に、顔面神経麻痺以外に、手足の麻痺やしびれ、ろれつが回らない、物が二重に見える、めまい、意識障害といった他の神経症状を伴う場合は、神経内科の受診を優先すべきです。どちらの科を受診するか迷う場合は、まずは顔面神経麻痺以外の症状がないかを確認しましょう。耳の症状(痛み、水疱、難聴、めまいなど)が顕著であれば耳鼻咽喉科、他の神経症状が目立つようであれば神経内科、という大まかな目安があります。また、両方の科が連携して治療にあたることもあります。
耳鼻咽喉科?神経内科?顔面神経麻痺の受診先